まずは正しい知識から
歯周病とは文字どおり「歯の周りの病気」です。歯そのもの…というよりも歯ぐきや歯をささえている骨が問題なのです。しかも歯周病は短期間の治療で治ることはないんです。仮に治ったとしても再発が充分ありえる病気なので定期健診が重要です。口臭の原因にもなる歯周病…
歯周病は短期間の治療では治ることがないんです。糖尿病の人が病気をうまくコントロールしながら生活してるように、歯周病もその原因や特徴をよく理解し、かかりつけの歯科医院のアドバイスを受けながら、日常生活にその対応を取り入れていっていただきたいです。急性症状が出たときは、早期に治療しないと急速に歯をささえている組織が破壊されてしまいます。主治医との二人三脚で根気よく治療していくのがよいです。そして3~12ヶ月に一度の定期健診をおすすめいたします。
生活習慣を見直そう!
1996年(平成8年)厚生労働省は、それまで「成人病」と呼ばれていた病気を『生活習慣病』という名称に変更しました。これは、成人病がある日突然病気になるのではなく、“若い頃からの日常生活のあり方やよくない生活習慣が原因”で、徐々に病気になり、“ある年齢層に達すると症状が出てくる”ということから日常の生活習慣の改善により病気の予防や治療を行う”という考え方によるものです。
糖尿病、心臓病、ガンなどと共に、現在では歯周病も生活習慣病の一つとして認知されています。
悪い生活習慣を改善し、口の健康を維持することが全身の健康のためにもなるのです。
歯周病と体のアブナイ関係
歯周病は、静かにゆっくりと進行する病気です。
初期では自覚症状が少ないため、気づいたときにはもう手遅れになり、歯を失うことになります。
しかし、もっと恐ろしいのは、歯周病が全身の健康にも大きくかかわっているということです!
例えば、歯周病が動脈硬化性疾患や心臓血管疾患、妊婦における早産や低体重児出産などの原因になりうることがわかっています。
また、糖尿病などの病気やストレス、老化にみられる骨の変化、喫煙などの生活習慣の乱れが歯周病の危険因子になることもわかっています。
このように、歯周病は全身の健康に大きな影響を持ち、また逆に全身の病気や生活習慣も歯周病に大きく関係しています!
妊婦さんはくれぐれもご用心
女性は、妊娠するとホルモンのバランスがくずれたり、つわりのひどい時期は歯ブラシを口に入れただけで吐き気をもよおしたり、一度にたくさん食べられず小分けして食事の回数が増えます。
また、すっぱい酸性の食品を好むことなどにより、口の中がむし歯や歯周病になりやすい環境になってしまいます。
お母さんの健康は赤ちゃんの健康!
自分ひとりの体ではないので、妊娠の前から定期的に予防治療に心がけ、妊娠したらまず、かかりつけの歯科医院で一度口の中全体のチェックをしてもらいましょう。
歯周病の原因は何?
プラーク(歯垢)は⻭の表⾯についた細菌の集団で、⻭周病の原因となります。プラーク(歯垢)にはわずか1mgのなかに約1憶個もの細菌が含まれているということです。おそるべし、おそるべし。
プラーク(歯垢)はどうして⻭につくの?
細菌は、糖分を分解して⽔に溶けにくい粘着性のある物質を作り出します。こうして⻭⾯に付着されると、「うがい」くらいではなかなかどうして取れません。ブラッシングあるのみです。
…しかし、プラーク(歯垢)はブラッシングが届きにくい場所に沈着しています。
ごはんの残りカスなどをエネルギー源として、プラーク(歯垢)は強い酸で⼈間の体で⼀番硬いといわれる⻭のエナメル質をも溶かしていきます。
普段からの⼼がけがいかに⼤切か…わかっていただけたでしょうか?
プラーク(歯垢)と歯石は違うの?
プラーク(歯垢)は細菌のかたまり。取り除かないでそのままにしておくと、次第にプラーク(歯垢)が唾液中のカルシウムやリン酸などによって石灰化してしまい、歯石になってしまうのです。
つまり歯石とは、細菌の化石というわけです。歯石というのは、ブラッシングぐらいではなかなかとれない手ごわい相手です。それに、歯石の表面にはつねにプラーク(歯垢)がついた状態になるため、歯ぐきは赤く腫れ、出血しやすくなります。
すぐに歯医者さんで取ってもらい、以後は定期的にチェックし、こまめに歯石を取ってもらいましょう。
歯槽膿漏や歯肉炎とは違うの?
歯周病はまず歯肉の病気として始まる、これが歯肉炎です。
歯肉炎は、プラーク(歯垢)の中の細菌のかたまりが歯肉に害を与え、炎症を起こした状態です。ただし、この初期段階で病気に気づき、適切な処置を行っておけば、ほとんどが治り、歯肉も元通りになります。
しかし、放っておくと、炎症が歯肉の中の歯槽骨(歯を支える骨)に広がり、骨を溶かして膿を出す…いわゆる歯槽膿漏になります。
歯槽膿漏は歯周病の症状を言ったもので、意味としてはほぼイコールと考えてもらっていいのです。
歯周病へのコワ~イ道のり
歯周病は時間がたてばたつほど進行します。症状としては、歯肉が赤く腫れ、血が出る、膿が出る、などがあります。やがて歯周ポケットが形成され、歯槽骨がとけて、歯がグラグラと揺れ始めます。
最悪の場合はポロリと抜けてしまいます!失った歯は二度と戻らないのです!
歯周病は自然に治るの?
自然には治りませんが、予防はできます。
歯周病にかかった歯を、放っておいても自然に治ることはありません。気が付いたときにはもう手遅れ…そうならないためにも、普段からの正しいブラッシング、定期的なプラーク(歯垢)・歯石の除去が予防のかなめになります。
プラーク(歯垢)・歯石を取り除こう!
毎日、自分で行うブラッシングは基本中の基本。これはとても大切なことです。
しかし手ごわいのは歯周ポケット内に沈着している「歯肉縁下歯石」、ここには嫌気性細菌という悪玉が棲息しています。これを除去しなければ、歯周病の進行をストップさせ、再発を防止することは難しいです。
歯肉縁下歯石は個人でブラッシングしただけでは取れないので、かかりつけの歯科医院で取り除いてもらうしかありません。
「え~面倒くさい」なんて言わずに…あなたの人生のためにとても大切です。
1日に1回は歯ぐきを鏡で見よう!
「自分は若いからまだまだ大丈夫」とか、「どこも痛くないから平気」なんて思ってる若い方、多くはないでしょうか?
まず、歯周病は決しておとなだけの病気ではないことを自覚するべきです!
早期発見、早期治療が、時間と治療費の節約につながります。1日に1回は鏡で口の中を見て、歯ぐきが赤く腫れ上がってはいないか?
出血するようなことはないか?などなど、しっかりチェックしてみましょう。少しでも歯周病の兆候が見られたら、かかりつけの歯科医院を受診しましょう。
かかりつけの歯科医で定期健診を!
ほとんどの人の口の中に程度の差こそあれ、プラーク(歯垢)は見られるんです。
予防のためにも、かかりつけの歯科医院をぜひ持っておきたいところです。
歯周病があるとわかった人は、かかりつけの歯科医師・歯科衛生士の指導のもと、しっかりした治療計画を立てることです。
たとえ治ったとしても、再発が十分あり得る病気なので、3~12か月間隔で定期的なチェックを受けましょう。
定期健診は、いつまでもおいしく食事ができるよう、自分の歯と体の健康を守るために大切なことです。
Let'sプラークコントロール!
プラーク(歯垢)を取り除くことを、プラークコントロールと言います。
その基本は日頃からの歯みがきです。歯ブラシはもちろん、デンタルフロスや歯間ブラシなども併せて使い、歯と歯の間や歯と歯肉の境目もしっかりブラッシングすることが大切です!
いろんなブラッシング法がありますが、まずはプラーク(歯垢)染め出し液を使って自分の歯みがきの方法をチェックしてみましょう。
もしかしたら歯みがきの方法に問題があることもあるので、かかりつけの歯科医院に相談することが大切です。
身近に潜む危険なワナ
歯周病の直接的原因がプラーク(歯垢)中の細菌であることは間違いないのです。
しかし、感染したからといってすぐに全ての人がひどい歯周病になるわけではなく、いろいろな要因が関係して発症に至るのです。
我々をとりまく生活環境も一つの要因であり、個々の悪い生活習慣や、それによる体の抵抗力の低下が歯周病を発症させ、増悪させる危険因子になっているのです。
口腔清掃の習慣
お口の健康の基本中の基本!プラークコントロールをしっかりしないと…。
正しい歯みがき習慣で口腔内の清潔が保たれていないと、歯周病を起こす細菌の温床であるプラーク(歯垢)が付着し、歯肉に炎症が起こるのです。弾力を失った歯肉と歯の間には、歯周ポケットができ、そこにますますプラーク(歯垢)がたまりやすくなり、症状を悪化させていくのです。
食習慣
軟らかい食べ物や糖分の多い物は、プラーク(歯垢)が増えてしまう原因です!
バランスのとれた食生活は、全身の健康を促して歯周病になりにくくなります。
食物繊維が豊富な食べ物は、プラーク(歯垢)の付着を抑制するばかりか、むしろプラーク(歯垢)の除去効果さえあります。
また、充分にかむことにより唾液の分泌が促され、口腔内の浄化がもたらされるだけでなく、あごの筋肉を使う事で脳が活性化されます。
ところが最近では、スナック菓子・インスタント食品などに代表される、軟らかくて粘着性のある食べ物が好まれる傾向があり、その結果、プラーク(歯垢)が停滞し、唾液による自浄作用も低下して細菌の繁殖には絶好の条件を自らが作ってしまうことになります。
栄養の偏りは歯周病の悪化の原因となります。
口内を健康に保つにはビタミンA、B、C、D、E、K、カルシウム、亜鉛、マグネシウムなどたくさんの栄養素が必要です。バランスの良い食事をすることが大切です。
また、糖分の取りすぎは、歯周病菌、むし歯菌等の活動に最適な環境を与えてしまうことになり、さらに、コーヒーなどの着色性の食品を過剰にとると、歯の表面がザラザラになる事でプラーク(歯垢)が付着しやすくなるので注意が必要です。
喫煙の習慣
喫煙は全身だけでなく、お口にも悪影響を与えます。
タバコには、タール・ニコチン・その他化学物質がたくさん含まれています。
また、一酸化炭素も排出します。
タールは歯面に付着し、それを介して歯やその周囲に汚れがたまりやすくなり、プラーク(歯垢)の付着が助長されます。
また、ニコチンには血管を収縮させる作用があり、血液の循環や免疫機能に障害を与えるため、歯周病菌に対する歯肉の抵抗力を低下させ、細菌の侵入を容易にさせてしまいます。
一酸化炭素は血中の老廃物をキレイにするヘモグロビンと結合し、その力を弱めるため、歯肉が炎症を起こしやすい状態になります。
また、ニコチンなどの化学物質が歯肉細胞の機能を低下させ、歯肉の治りを悪くします。
電子タバコの中にもニコチンなどの化学物質が含まれており、同様にリスクがあります。
このように、喫煙は歯周病の発症予防や治癒の面からも、不利な条件を歯周組織に提供しています。
身体活動と休養の習慣
適度の運動と節度ある休息および睡眠の習慣は、全身の健康を促し、歯周病になりにくくします。
適度な身体活動=運動には、生活習慣病の発生を予防する効果があり、健康づくりの重要な要素なのです。また、休養、ストレスの低減、睡眠の確保など、心の健康は生活の質を左右する要素です。
健康な精神こそが健康な肉体への近道であり、リフレッシュも大いに大切なのです。
特にストレスは、歯周病の悪化に大きく影響しています!
直接的には、ストレスを感じるとまず唾液中の副腎皮質ホルモンの濃度が高くなり、それにより白血球の働きが阻害され、歯周組織の免疫抵抗力が低下します。また、知らず知らずのうちに歯を強くかみしめてしまい、歯槽骨にダメージを与えたり、持続的な圧力により歯周ポケットが広がり、プラーク(歯垢)がたまりやすくなります。
そして間接的には、ストレスがあるとどうしても生活のリズムが崩れてしまい、不規則な生活から栄養バランスのとれた食事ができない(食習慣の変化)、タバコの本数が増える(喫煙の習慣の変化)、ブラッシング回数の減少や内容の低下(口腔清掃の習慣の変化)など、歯周病と関連した生活習慣・行動に与える影響も無視できないのです。
口に関する習慣(口腔内の悪習癖)
歯の欠損、歯並び・かみ合わせの異常などのさまざまな要因から、左右どちらかの奥歯だけとか前歯だけで偏ったかみぐせがあると、一部の歯だけに特に強い力がかかりやすくなり、歯を支えている歯周組織を傷害します。
また歯並びが悪いと、食べかすがたまりやすくなり、細菌が繁殖しやすくなります。
歯ぎしりや食いしばりなどの不正習慣癖によって過度の力が歯に加わり、歯を支えている組織や骨にダメージを与えます。
口で息をする(口呼吸)こともよくないです。お口を開けた状態となることで乾燥し、感染しやすい状態になります。また、前歯が出てくるなど歯並びに影響します。
歯医者に行かない習慣
すごく痛くならないと歯医者に行こうとしない人の多くは、たとえ症状が出ていなくても、口の中のなんらかのバランスがくずれているはずです。すでに歯周病になっていることも多く、重い歯周病に進む傾向があります。
かかりつけの歯科医をみつけ、定期的に健診をしてもらいましょう。
その他
薬の長期服用が関係することもあります。抗てんかん薬(フェニトイン)、免疫抑制剤(シクロスポリンA)、降圧剤(ニフェジピン)などの長期服用が、歯肉を腫らせたり、唾液の分泌量を減少させる副作用をもたらすと言われています。唾液には細菌の増殖をおさえる作用があり、唾液の量が減れば口の中の抗菌作用が衰えて、細菌が繁殖しやすい環境になります。
また、思春期や妊娠時、更年期など、女性ホルモンのバランスが崩れる時期に、歯ぐきの炎症を引き起こしたり、悪化させることがあります。
そして、遺伝的な要素の関連も否定できません。乳歯の状態でも重症の歯周病が見られることがあり、遺伝的に細菌に対する抵抗力が強い人と弱い人がいるので、重症の歯周病にかかっている人のいる家系では、とくに歯周病予防への注意が必要です!
また、過度の飲酒によりブラッシングせずにそのまま寝ると、口腔内が不衛生になるので、飲酒の習慣にも注意が必要です。
他の生活習慣病との関係
歯周病は、さまざまな面で全身の病気に影響を及ぼしたり、また逆に、全身状態からの影響を受けています。
他の全身的な生活習慣病に大きく関わっています。
糖尿病
糖尿病が歯周病の危険因子であることは、すでによく知られています。血糖値が高い状態が続くと、白血球の働きが阻害され免疫機能(細菌などの病原菌に抵抗する働き)が低下することにより、歯周ポケット内で細菌が増殖しやすくなるのです。
また、逆に歯周病が糖尿病の発症や血糖コントロールに影響を及ぼすこともわかっています。歯周病の治療を行うことにより、血糖コントロールが改善されることが明らかになりました。糖尿病で歯周病がある人は、歯周病をきちんと治療することが大切です。
心臓病
歯周病がある人は、心筋梗塞のような心臓の血管が詰まるタイプの心臓病を起こしやすいことが明らかになっています。
心筋梗塞の危険因子としては、これまで高血圧・高脂血症・喫煙などがあげられていましたが、今ではそれに加えて、歯周病も重大な危険因子となっています。
歯周病が原因で血管が詰まりやすくなるのは、細菌感染によって血液を固まりやすくする物質が血液中に増えるためだと考えられています。
ガン
ガンは、日本人の総死亡原因の約3割をしめています。
特に肺ガンのハイリスクグループのひとつである喫煙者は、歯周病のハイリスクグループでもあります。
タバコの健康への影響について十分な知識をもつことが大切です!
歯科治療時の注意点
生活習慣病をお持ちの方が歯科治療を受けるにあたっての注意点を、各々の病気について説明していきます。
糖尿病
特にインスリンを投与されている人は、血糖値が下がると発作を起こす危険性があります。
必ず問診表に明記するとともに、かかりつけの歯科医と相談のうえ、空腹にならない時間帯に予約を取るなど、十分に気をつけましょう。
また、キャンディーや角砂糖などの非常用の甘味物を必ず携帯するよう心掛けてください。
心臓病
心筋梗塞や狭心症の発作の病歴をかかりつけの歯科医に伝えておくとともに、心臓の薬(ニトロールなど)は、いつでも取り出せるように準備しておくことが大切です。
高血圧症
各歯科医院でも血圧などは、いつでも測れる体制になっていますが、一応問診表に明記して、詳細をかかりつけの歯科医に伝えておきましょう。
脳卒中(脳内出血、脳梗塞)
これらの既往のある人の多くは、血液の流れをよくする薬を飲んでいます。そのため出血が止まりにくくなっているのでその旨を問診表に明記して、現在服用中の薬の説明書を必ず持参し、内科主治医の連絡先などもかかりつけの歯科医に伝えておきましょう。
ガン
最近では、健診などで悪性腫瘍の早期発見と治療が可能になってきたため、ガンの告知も一般的になってきました。
現在ガンの治療を受けている、あるいは過去に受けていた人は、あらかじめかかりつけの歯科医にその旨を伝えておきましょう。
また、今治療を受けている病院や主治医の連絡先なども伝えておけば、病院とかかりつけの歯科医院で正しい認識の基に治療が行えます。
喫煙者は歯周病になりやすい?
プラーク(歯垢)の中の細菌以外にも、日常生活の中で歯周病の症状を悪化させる原因…そのひとつがタバコです!
喫煙による末梢血管の収縮や血流の低下などにより、歯周ポケット内での細菌の付着・増殖を促進したり、歯周組織の防御機能を低下させることにより歯周病を進行させ、再生・修復を遅らせます。
とくにビタミンC、ビタミンEなどが不足すると、さらにそのリスクが高くなります。
タバコと歯周病の蜜月?関係
タバコを吸う人は、吸わない人に比べて3倍以上も歯周病にかかりやすく、それにより歯をなくしてしまう割合も2倍ほど高い…ということがわかっています。
また、かかりやすいだけでなく、治療後の回復も悪くなります。それでもやめずに吸い続けると、歯周組織の破壊が高まります。
喫煙が歯周病に与える影響は、その量に比例し、吸う本数が増えれば、歯周病の程度も悪化します。歯肉の弱い人、すでに歯周病の人はタバコをやめましょう!
「僕は大丈夫」と思っている若者も要注意です!
喫煙者の悲劇、歯周病!
喫煙者である歯周病患者の口の中はどうなっているでしょうか?
長期間の喫煙は、歯やその周囲にタールなどの汚れを付着させ、見た目にもきれいとは言いがたいものです。
歯、舌、歯肉が黒く着色することはもちろん、ヤニがつくと歯の表面がザラつき、歯周病の原因であるプラーク(歯垢)をさらにつきやすくします。
ストップ・ザ・タバコ!
「タバコはやめたい!でもなかなかやめられない。」これが多くの喫煙者の偽らざる心境でしょうか?
最近では、タバコがやめられないのは心理的依存と、ニコチンに対する身体的依存より成り立つ「依存症の一型」であることがわかってきました。
まず考えられるのは、ニコチン代替療法。ニコチンガムやニコチンを含む貼り薬が一般によく知られるようになりました。
しかし、「禁煙しても長くは続かない…。」実際、喫煙者の60%以上が一度は禁煙を試みていますが、実際に成功した人は11%しかいません。
「継続は力なり」と言いますが、一度や二度の失敗で諦めず、根気強くチェレンジすることが大切です。
タバコの害いろいろ
タバコには、200種以上の体に有害なものが含まれています。
中でも、ニコチン、タール、一酸化炭素が三大有害物質です。ニコチンの毒性は青酸に匹敵すると言われており、タールには多くの発ガン物質が含まれており、特に呼吸器系の疾患やガンと深い関係があります。
そして、一酸化炭素は全身的な酸素欠乏を引き起こし、虚血性心疾患、末梢動脈疾患、慢性呼吸器疾患、さらに妊娠時の胎児への影響が考えられます!
精神的に落ち着くなど、タバコの持つメンタルな効果もあるかと思いますが、体の健康を考えると決して良いとはいえません。
現代人のここがアブナイ!
まずは食生活の改善から。
「歯ごたえのある食べ物」を食べましょう。
生活の豊かさとともに、美食・飽食といわれるくらい豊かになった食生活…その反面で急激な軟食化が進みました。加熱調理法の進歩や、レトルト食品・インスタント食品に代表される加工食品の普及によって、現代人の食生活は激変しました。食べ物の素材や調理法の変化により、かむ回数が減少し、全身の健康にも影響をもたらしています。
しっかりかんで食べましょう
かめばかむほど食べ物は細かく砕かれ、消化や吸収が良くなり、唾液の分泌量も増えます。唾液には殺菌作用があり口の中の細菌の活動を抑えたり、自浄作用により汚れがつきにくくなります。
よくかまずにすぐに飲み込んでしまうような人は唾液の分泌が少なく、むし歯菌や歯周病菌にとって格好の活躍の舞台になってしまいます。
また、よくかむことは肥満の防止やあごの発育、脳の活性化にもつながります。
昔から「ゆっくり、よくかんで食べること」をすすめられていますが、これは健康な体をつくる第一歩でもあるのです。
上手にシュガーコントロール
「うまい」の語源が「あまい」であるように、私たちにとって甘味は魅惑の味です。むし歯や歯周病は砂糖の消費量の増加とともに増えてきました。また、麻薬と同様に習慣性があり、一度甘さを覚えるとなかなか断ち切ることは困難です。
砂糖はプラーク(歯垢)の量を増やし、唾液を粘稠にし自浄作用を低下させるので、甘い物を上手にコントロールすることが大切です。
歯周病は万病のもと?
そう言っても過言ではありません。
歯周病の「起因」はプラーク(歯垢)です。しかし最近では、糖尿病などの全身疾患や、喫煙などの嗜好や生活習慣が歯周病を引き起こしたり、悪化させる「原因(リスクファクター)」になっていることもわかってきました。
歯周病のリスクファクターとしては、糖尿病、喫煙、ストレス、ホルモンの不調和、遺伝、悪習癖、薬の長期服用、口腔清掃、食習慣などが考えられており、歯周病も生活習慣病(成人病)のひとつとして認知されています。
歯周病を予防・改善していくためには、口腔清掃はもちろんのこと、ライフスタイルを見直すことも大事です。
歯を大切にすれば長生きできる?
歯の健康を維持することによって、全身の健康維持と生活の質(QOL)を高めることができるのです。
我々が生きていくためには、食べて栄養をとることが必要です。
健康な歯とあごでよくかむと飲み込みやすくなるうえ、体内で消化吸収されやすくなるのです。
また、かむことによって脳が刺激され、痴呆予防にも効果があるのです。ほかにも、自分の歯が多く残っていれば発音もなめらかで、表情も豊かに明るくなるのです。
よくかめる歯があれば、豪華な食事でなくてもいっそうおいしく、楽しくなり、話もはずみ、生活の質(QOL)を高めてくれます。
全身疾患へのファーストステップ
歯性病巣感染(しせいびょうそうかんせん)って知っていますか?
これは、口の中に原発する病巣感染が他の臓器に移り、二次的に全身疾患の原因になったり、それを増悪させたりする因子となることなのです!
ヒトの口の中には、健康な場合でも約300種類、2億近い細菌がおり、口の中の状況に応じて善玉菌になったり悪玉菌になったりしています。
特に歯周病菌は歯ぐきや骨の中の血管にもぐり込んで、血液を介し、心臓や肺などの全身の臓器に運ばれてしまうのです!
血管に入らなくても、消化管や気管、肺に移動してしまうこともあるのです。
歯性病巣感染によって引き起こされる全身疾患には、以下のようなものが考えられているのです。気をつけましょう!
関係してます!
「○○と歯周病」
いかがですか。
歯周病が口の中だけの問題でないことはわかってもらえたでしょうか。
ここでは具体的に歯周病と他の病気がどう関係しているか紹介します。
呼吸器系疾患と歯周病
一般に喫煙者、高齢者、あるいは体の免疫系が弱くなっている人は、肺炎、気管支炎、肺気腫、慢性閉塞性疾患などの呼吸器系疾患にかかりやすいです。
更に最近では、新しい危険因子として歯周病が注目されてきています。
口の中の細菌が唾液と一緒に食道ではなく、誤って気管に入り込むことが原因です。
その代表例が高齢者の誤嚥性肺炎です。
また、歯周病菌を撃退する免疫反応として分泌されるサイトカインが炎症反応を刺激することで肺の感染を開始、あるいは進行させます。
糖尿病と歯周病
コントロールされていない糖尿病が歯周病の危険因子であることは、以前から分かっていました。
糖尿病の人は、そうでない人よりも2.5倍以上も歯周病にかかりやすいです。
糖尿病は歯周病よりも先に存在し、歯周病の発症や進行の原因となり得るのです。
ところが、最近ではこの関係が一方的ではなく相互関係があることが明らかになってきました。
歯周病が原因で糖尿病の血糖値のコントロールが難しくなり、糖尿病のさまざまな合併症に対するリスクを悪化させることもあります。
心臓疾患と歯周病
歯周病が循環器疾患のリスクを高めることが分かってきました。
歯周病にかかっている人は、致命的な心臓発作を起こす危険性が歯周病でない人に比べて2倍にもなるのです。
口の中の細菌が心内膜炎を引き起こすことはよく知られており、先天性心疾患や人工弁を有する患者には十分注意しなければなりません。
歯周ポケットから血流中に入り込んだ細菌が血小板の凝集に関与し、小さな塊となって、動脈をつまらせると考えられています。
妊娠と歯周病
低体重児早産の危険因子としては母親の喫煙、飲酒、感染などが知られていますが、歯周病を放置したまま妊娠すると、早産で低体重児出生の危険性は7倍も高くなります。
骨粗しょう症と歯周病
歯周病による歯槽骨破壊と、骨粗鬆症による骨密度の低下や骨粗鬆症を引き起こす遺伝的因子や環境因子の存在が両者の相関関係をもたらすと考えられています。
赤ちゃんにむし歯がうつっちゃう?
むし歯は、細菌によっておきる病気で、そのむし歯菌(ストレプトコッカス・ミュータンス)は産まれたばかりの赤ちゃんの口の中にはいません。
しかし、歯がはえ食べ物を口うつしでもらったり、同じスプーン・箸を使うなどで唾液を介して細菌が感染するのです。
このストレプトコッカス・ミュータンスには8つの型があり、こどもの型と父親の型は一致せず、母親の型と一致していることが分かってきました。
そこでお母さんはこどもをむし歯にしないために5つのポイントに注意しましょう。
5つのポイント
【お母さんのむし歯治療】お母さんからこどもへの感染を減らします。
【歯みがき習慣を身につける】お母さんの細菌を減少させ、こどもに歯みがきの習慣と手本になるように…。
【甘味をひかえた食生活】甘い物が好きなこどもに育つのを防ぐことにつながります。
【バランスの良い食生活】歯質の良否に重大な影響を与えます。
【定期的な歯科健診】かわいい我が子のためにも、定期的にかかりつけの歯科医院で歯科健診を。
バランスのとれた規則正しい食事を
「医食同源」って知っていますか?
何をどう食べるか、ということは体の健康はもちろんのこと、歯と歯ぐきの健康にも大きく関係しています。
体に良い、栄養バランスにすぐれた三度の食事が大切です!何でも好き嫌いなく食べたいものです。
歯周病は早産や低体重児出産のおそれアリ!
歯周病のお母さんは、早産や低体重児を出産するリスクが高い…という話を知っていますか?
妊娠すると、つわりのため口腔内が不衛生になったり、ホルモンの影響で歯周病が悪化しやすくなります。
歯周病菌を撃退する免疫反応として分泌されるサイトカインのうち、プロスタグランジンなどのレベルが血液中で上昇することにより、胎盤を通過して胎児の成長に影響を与えたり、子宮筋を収縮させて早産を引き起こすと考えられています。
歯周病による早産や低体重時出産のリスクは歯周病に罹患していない妊婦に比べ、約7倍高くなると言われており、これは飲酒、高齢出産よりも高いのです。
ただし、歯周病は早期に治療すれば危険なものではないので、生まれてくる赤ちゃんのためにも、妊娠したらまずかかりつけの歯科医院に行って、お口の中全体をチェックしてもらいましょう!
女性ホルモンの影響が…
驚くべきことに、女性ホルモンの変化が歯周病に悪影響を与えることもわかっています!
「こどもを1人産むたびに歯を1本失う。」と言われたように、妊娠・出産は女性の口の中をむしばむ傾向があります。
女性特有の因子として「女性ホルモンの影響」があります。妊娠中は女性ホルモン(エストロゲン)を抑える黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が盛んになります。このホルモンのアンバランスにより歯周病菌が繁殖しやすくなります。
またそれにより、歯周病菌を撃退する免疫反応として分泌されるサイトカインが、早産や低体重児出産につながるともいわれています。
いずれにしても、妊娠中はいろいろな理由により口の中が不潔になりやすく、歯周病になりやすい状態であるともいえます。まさにそこをねらって、歯周病は進行していくわけです。
妊婦歯科健康診査
妊婦の方と、生まれてくる赤ちゃんのために、歯科医院において1回、公費(無料)で歯科健康診査(治療は別途となります)を行っています。